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磁力を使って物体を分離する装置がマグネットセパレーターです。粉体中の金属異物を除去するものや積載された鉄板を1枚ずつ分離させるものなどがあります。磁力による分離のため、磁石にくっつく、あるいは離れる性質のある金属の分離が可能です。製品への金属異物混入リスクの回避や油で密着したブランク材の確実なセパレートに役立ちます。
磁力を出す方式は、電磁式と永久磁石式です。永久磁石式は減磁の心配がほとんどなく、半永久で使用できます。
マグネットセパレーターは、マグネットで金属カスを吸い付けて分離する仕組みです。マグネットドラムで金属カスを吸い付けて、絞りローラーで挟み、水分を取ってから掻き取ることで、研磨カスなどの切粉や汚泥スラッジのみを回収します。
たとえば、研削加工では、研削液をかけながらワークを加工するため、研削液のなかに研磨後のカスと砥石の砥粒が混ざってしまいます。タンクが研磨カスでいっぱいになる前に分離して除去するために、マグネットを使って研磨カスを分離して排出するのです。
マグネットドラムのマグネットに使用されるのは、主にフェライトと希土類。希土類は、フェライトと比較して価格は高いですが、10倍の磁気エネルギーをもっています。磁石に吸着されにくい材質のものを分離したいときに、希土類のマグネットが選定されるケースが多いです。
使用用途は、工作機械用と資材選別用があります。工作機械用の場合、研削盤やシェービング盤、ホーニング盤、鋳物の切削加工を行う各種加工機にマグネットセパレーターが設置されます。研削盤の切削油に含まれる切粉やスラッジの除去などが目的です。
資材選別用の使用用途には、産業廃棄物・粗大ごみからの金属回収、アルミ・タイヤ・木材チップ・飼料などの資源再生、鉱石・炉滓・石炭などの再生、鋳物砂・塵芥焼却炉からの鉄分回収などがあります。食品の金属異物分離にも使われます。
機械からクーラントタンクにクーラントが戻る際にマグネットセパレーターを通すことで切粉を回収するのが工作機械用セパレーターです。工作機械用セパレーターは、高いセパレート効率が特徴。約20~30μの弱磁性体を90%捕集可能な製品もあります。希土類マグネットを採用して高磁束密度化を実現。ランニングコストも安く、フィルタ交換などの手間が発生しません。サイクロンを設置すれば、微細な砥粒も捕集できます。クーラントタンク内の切粉を除去できるため、設備清掃やクーラント液の交換頻度が減少。工作作業の効率化にもつながります。
永久磁石式セパレーターは、高磁力が持続するのが特徴です。電磁式で問題になりがちなジュール熱が発生しません。電磁式と比較して小型軽量の傾向がありますが、電磁式と遜色ない磁場を得られます。構造が堅牢なため、取付けや取り扱い、保守が簡単です。
マグネットセパレーターの特徴や仕組みについて紹介してきました。
工作機械用と資材選別用では、選ぶべきマグネットセパレーターの規模やマグネットの種類などが異なります。また、工作機械用でもクーラントの種類や流量、排出される切粉の量などで必要な処理能力を選定することが大切です。適切なマグネットドラムの磁石の種類や絞りローラーの材質を選んでください。
機器から発生するスラッジを、ろ過する装置をクーラントろ過装置といいます。使用用途に応じて様々な製品があるので、『目的にあったクーラントろ過装置か』『スラッジの特性にあった装置か』を見極めましょう。